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波と戦うキャッチャーボート

 空を見ると、決して天気が悪い訳ではないですよね。
 やはり暴風圏は「咆える40°、狂う50°、叫ぶ60°」のようです。
 この波を23隻が一斉に超えて行くんですね。
 母船はまだしもキャッチャーボートが辛そうです。
 写真は波の谷間から飛び出す瞬間でしょうか、前が完全に浮き上がっています。

 

いつまで見れるか分りませんが、暴風圏を進む旧しらせのようです。

おやじメモより

 暴風圏内のキャッチャーボート まだ荒れる だるま同然

 母船と二十三隻の船体はこの荒波を切り抜けるに懸命だ

捕鯨船ではありませんが、イメージ的にこんな感じだろうと思います。船の大きさも同じぐらいでしょう。
Warship vs Big Waves-1

 しかし、この波では母船と言えどもタダではすみませんね。
 こんな感じでしょうか?

 船尾にスリップウエイがあるので捕鯨母船だと思いますが、日新丸級と比べるとかなり小さめですね。三代目日新丸と同じぐらいに見えます。船尾のU型もそっくり。

 因みに三代目日新丸は、元日本水産のトロール船「筑前丸」です。

 スリップウエーは捕鯨母船における構造で、トロール船では スタンランプといい、この構造を持つ船舶をスタントロール船といいます。

 南氷洋を目指す船と言えば、南極探検隊の砕氷艦がありますね。「しらせ」はこの暴風圏で最大53度、「宗谷」は最大63度も傾いたという記録があります。そこで、即席ですが描いてみました。
 傾き易い船だとは言うものの、よく転覆しませんでしたね。

 南極観測船には通常の艦船にあるビルジキール(ローリング(横揺れ)を抑制して安定した航走をするためのフィンで、船底の両側面に装備する)が装備されていません。氷海を進む時に邪魔なようです。

 その分、通常の海上航行時は揺れが激しくなり、相当慣れていないと激しい船酔いに襲われてしまうようです。

第十六利丸の操縦室

船橋(せんきょう)またはブリッジという

目標達成 暴風圏

 第十六利丸船長の息子さんが、父親から聞いていたという話を ★ CATCHER BOATで次のように紹介しています。

「暴風圏の荒天時はこのブリッジ以外は全て水没?(ほぼそれに近い状態)し、生きた心地がしなかったそうです。」

 

 そうだったろうと思いますね。

 

 また、ある捕鯨船に乗船していた方の息子さんは、父から聞いていた話として

「キャッチャーボートは潜水艦並みの防水性があるから、ブリッジさえ出ていれば沈まないのだ」と覚えていました。

 昭和41年11月27日に南氷洋へ向けてダーバンを出港した第十八関丸は、弘井機関長の日誌によると、三日後から風力6の中を航行しています。

 風速の目安によると、風力6は「大枝が動く。電線が鳴る。傘はさしにくい。波の大きいものができはじめる。いたる所で白く泡立った波頭の範囲が一層広くなる(しぶきを生じることが多い)。」風速10.8〜13.8 m/s(秒速)

 そして12月6日にピークを迎えます。風力10は「陸地の内部ではめずらしい。樹木が根こそぎになる。人家に大損害がおこる。波頭が長くのしかかるような非常に高い大波。大きな塊となった泡は濃い白色の筋を引いて、風下に吹き流される。海面は全体として白く見える。海面は長い白色の泡の塊で完全に覆われる。波の崩れ方は激しく、衝撃的となる。波頭は吹き飛ばされて水煙となり視界も損なわれる。」風速24.5〜28.4 m/s

昭和41年12月6日 [ 起床11時、天気 O(曇り)、風力10-9(風速20.8〜28.5未満m/s) ]

 午前4時より荒れ出し、見る間に暴風となる。低気圧なり。終日荒れ狂い、凪ぎる気配はさらになし。母船より反転の指令来れども、波浪高く反転すれば転覆の危険あり、凪ぎる迄つかせる(ママ)のみ。家内より「『徳川家康』の残りの分送ろうか?」との電報あり。「送れ」と返電する。自室にて軽く一人で呑み11時に眠る。今迄の第十五関丸よりみれば、格段の

差で自化(しけ)に乗りやすい。

昭和41年12月7日 [ 起床6時30分、天気 O(曇り)、風力9-8(風速17.2〜24.5未満m/s) ]

 昨夜は余り呑まなかったので、今朝は調子良好。久しぶりに朝食を食う。但し眠り浅し。相変わらずの荒天。

但しうねり稀々低くなった様なれば、 風の間を見て午前9時半に反転する。 調子に乗ってジャカジャカ走って

一番先頭に居たので、反転すれば最後尾。イヤハヤ。反転時に賄室(調理室)ポールド(舷窓、porthole、"port hole window"の略)より海水侵入、鍋に少し入った様なり。今日のオカズは塩辛い事だろう。

どの話にも嘘はないなと思われます。一度行ってみたいですね〜。南氷洋から南十字星を観てみたい。

未知との遭遇

日新丸 暴風圏を行く

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